新卒一括採用の魅力

 グローバル社会、ボーダーレス社会などど叫ばれるようになって久しい。すっかり聞きなれたフレーズだ。野球やサッカー、ゴルフなどのスポーツ界では日本人もなかなか逞しく見える。でも、日本社会はといえば、まだまだ内向きのように感じる。海外への留学生が他国に比べて少なく憂うる声もよく聞こえてくる。日本人の英語力も全体的に見れば、貧弱だ。また、日本社会を象徴するあのリクルートスタイル、新卒一括採用という硬直化した伝統はいかがなものか。国際派を自認する世の識者たちも一斉に厳しく非難する。「新卒一括採用なんてやってるから日本はだめなんだ」と。
 ところがである。ある外国人が流暢な日本語で語っていた。
「私の国では、中途採用は普通にあります。でもね、日本の新卒一括採用はとても素敵だと思うの。会社に入れば、同期意識が芽生えるし、仲間意識も強くて心強いのよ。だから私は日本企業に就職したわ」
 そうか、そうなんだ。このような視点もあるのか。思わず唸ってしまった。もちろん、内定がとれず、もがき苦しむ学生が氾濫する現状は何とかせねばなるまい。でも、自国の文化や伝統を世界水準に無理に合わせようとするのではなく、問題点もあるけど、いい面も大いにあると思うことも大事なのだ。このバランス感覚こそ本当の意味でのグローバル社会、ボーダーレス社会といえるのかもしれない。