老婆

  老婆の日課であろう
  古びたお店のシャッター
  開店前に丁寧に濡れ雑巾で
  ごしごし拭いている
  ゆっくりゆっくり力をこめて
  右から左へ
  左から右へ
  見えない定規があるように
  一直線に拭いている
  それは老婆の仕事ではなく
  老婆の生き方そのもの
  小さな背中に込められた
  背負い続ける無限の過去


  ゆっくりゆっくり力をこめて
  右から左へ
  左から右へ
  見えない定規があるように
  一直線に拭いている
  老婆の人生を想う