繰り返し

2018年8月2日 
今日も始まる。
何も描かれていないキャンバスに
一点から弱々しい線を引く。
別に目新しい線ではない。
歯を磨き、顔を洗い、戦闘服に着替える。
ご飯をかけこみ、家族に手を振って戦場に向かう。
何年も何年も同じことの繰り返し。


「何のために」
一瞬、頭をよぎるフレーズは仕舞い込み、
これからやるべきことに置き換える。
何年も何年も同じことの繰り返し。


「よくあきないね」
冷ややかな問いかけに苦笑する。
戦場での顔はよそよそしい。
机に座り、メールをチェックする。
眠っていた間に異変はない。
何年も何年も同じことの繰り返し。


「誰のために」
そんな問いかけ自体が無意味だ。
美辞麗句で自分の心さえ騙せてしまう。
哲学者や宗教家気取りも悪くない。
何年も何年も同じことの繰り返し。


「それでいいの」
いいも悪いもない。
世の中はそういう風にできている。
俺という人間もそういう風にできている。
何年も何年も同じことの繰り返し。


何も描かれていなかったキャンバスは、
随分、にぎやかになってきた。
夕方には書き込むスペースさえないだろう。
立ち止まって考えだしたら、ろくなことはない。
何年も何年も同じことの繰り返し。